2013年10月4日金曜日

アメリカ バリアフリーレポート 2013年9月

こんにちは。サトウです。
9月に2週間休みをもらって、アメリカに行ってきました。




日本では6月に障害者差別解消法が成立しましたが、
アメリカでは1990年にADAという世界で最初の差別禁止法ができました。
ADA成立の中心となった故ジャスティン・ダートさんの奥様にお会いできるチャンスに
恵まれましたので、思い切って行ってきました。
ワシントンD.Cにあるジャスティン・ダートさんの記念碑。
ジャスティンさんは自分の記念碑や銅像はつくるなと言い残したそうですが、
ここは住んでいたところの自治会からの要請だったので、受け入れたそうです。

ワシントンD.Cとニューヨークをまわり、いろんな交通機関を使ったり、
遊びに行ったりしたのですが、さすがADAがある国だな~と思うことがたくさんありました。

日本も2000年に交通バリアフリー法が成立してから、
都市部での公共交通機関のバリアフリー化はめざましいものがありますが、
アメリカに行ってみると、日本はまだまだ運動せなあかんな、
と実感しました。

これから日本で要望活動をするときに参考になるので、
今日は、今回訪問したアメリカのバリアフリー事情についてまとめてみます。


1.地下鉄
(1)ワシントンD.C
ワシントンD.Cはアメリカの政治の中心地です。
人口は63万人と少ないですが、地下鉄もご覧のように整備されています。



上記の路線図の左下に、このように書いてありました。
メトロ(地下鉄)は全駅車いすで利用可能なのです。
日本では大阪の地下鉄が数年前に全駅バリアフリー化しましたね。
自動改札はご覧のように車いすで取れる幅広改札がかならず1つはありました。

 ワシントンD.Cの地下鉄は、全駅バリアフリー化されています。

◎良いところ

  • 自動改札は必ず1つは車いすが入れる幅広の改札があります。
  • 車両とホームの段差・隙間はほとんどなし。
  • 車両の中の車いすスペースは、ほぼすべての車両に2カ所くらいありました。
  • エレベーターの位置などがわかるように、誘導用に車いすマークが必要な場所にわかりやすく貼ってありました。


▲問題点

  • エレベーターの故障が多く、行ってみたら使えないということが良くあるそうです。これが問題。


正面が改札からホームに降りるエレベーター。
エレベーターは全駅に完備していますが、故障が多く、
動かなくて使えない!ということが良くあるそうです。

ホームと車両との隙間と段差はほとんどなかったです。

(2)ニューヨーク

ニューヨークの地下鉄は、昔は治安が悪く乗客が少なかったのですが、
いまはかなり改善されて、東京のようにたくさんの人が乗っていました。

残念ながら、バリアフリー化されている駅は全体の10%くらいしかありませんでした。
実際に車いすでは、ほとんど使えないなという印象です。
ホームと車両の隙間と段差は少なめでしたので、早くエレベーターの設置をすすめて欲しいものです。

見にくいですが、EVがある駅は車イスマークが付いています。
http://www.at-newyork.com/new-york_information/subway_map.htm

▲悪い点

  • バリアフリー化されている駅が少ない(10%くらい?→日本の交通バリアフリー法の完勝!)
  • 車いすで通れる幅広の自動改札がない。車いすは横のドアを開けて入るが、わかりにくい。
  • 駅員がいない駅が多く、何かあっても対応できない。
  • エレベーターが良く壊れている。僕もヤンキースタジアムの前の駅で、一回閉じ込められました。幸い、一緒に閉じ込められたウーピーゴールドバーグのようなおばさんがあちこち電話してくれて、なんとか脱出できましたが。


2.バス(ニューヨーク)
バスは良かったです。僕が乗った車両は全部バリアフリーでした。
車両は2種類あって、1つはリフト、もう1つはスロープ(電動式・低床車両)です。
運転手が運転席に座ったまま操作できるので、日本より時間がかからないように思いました。

車いすスペースは座席跳ね上げ式で、2カ所あり。
僕が6回乗ったうち、2回はもう一人車いすの人が乗ってきたので、車イスの利用率は高いようです。
運転手も慣れていましたね。


3.長距離バス

激安がウリのメガバス。
2階建てで、1階部分に車イスが乗れます。
向かって左の側面のドアにスロープ置いて乗り込みます。
ワシントンD.Cからニューヨークまで350kmくらいあるのですが、
長距離バスに乗ってみました。
激安で有名なメガバスという会社で、ニューヨークまでなんと$18!

webで予約するのですが、ちゃんと障害者かどうかチェックする欄があるんです。
開いていくと、障害者でも乗れるように整備しているということが書かれてあります。
http://us.megabus.com/

以前は、車イスで乗れなくてトラブルが多かったらしいのですが、
僕が乗ったときは、対応も良く、ちゃんと乗れました。
見たところ全部同じ車両のようでしたので、どれでも同じように乗れるんじゃないか。

  • 2階建てで、1階部分に1台分の車イススペースあり(シートを3列スライドさせて車イススペースを作る)。webで予約時にどんな配慮が必要か書く。
  • スロープは日本に良くある設置型。
  • トイレは車イスでは使えない。


ちゃんと4点ロック。
ちょっとわかりにくいですが、シートを3列前にスライドさせて、車イススペースができます。

4.空港シャトル(スーパーシャトル)
こういうアメリカンなバンが迎えに来てくれます。
背が高いから乗るのは大変。
空港から市内のホテルまでの移動は、乗り合いタクシー(空港タクシー)を使ってみました。
一人一人の行き先(ホテル)までちゃんと送ってくれるので便利だし、価格もタクシーの1/4くらいと安いです。

僕が空港から市内に移動するときはリフト車がなかったのですが、
事前にwebで予約すると、リフト車が来てくれます。
電動車イスも乗れますよ。
http://www.supershuttle.com/
メガバスと同じように、webにはちゃんと障害者かチェックする欄があり、
どのようなサービスをするかも書いてあります。


5.歩道
 歩道はこんな感じで切り込みが入っていて、スロープになってます。
多少差はありますが、ニューヨークも同じようなつくりでした。

混んでないときは問題ないのですが、車イスでは1つのルートしか通れないので
混んでいるときは通りにくいのが難点ですね。

ワシントンD.Cの歩道の切り込み。

6.野球場

甲子園球場のバリアフリー化を要望してきたので、
野球場のバリアフリー状況は非常に興味がありました。

さらに、東京オリンピックも決まって、新しい施設の建設も始まるので、
要望活動をしていきたいと思っています。
世界的にスタジアムはどのような作りになっているのか見たかったので、
今回の訪問はかなり参考になりました。

(1)ヤンキースタジアム(ニューヨーク)
ずっと、甲子園球場が世界一の球場だと思っていましたが、
ヤンキースタジアムの方がさらに風格があったなぁ
2009年完成


これまで日本で7球場、アメリカで3球場チェックしましたが、
日本とアメリカではバリアフリーの整備の仕方に大きな差があります。
座席数やサイトラインの確保など全てにおいて圧倒的にアメリカの勝ち!

アメリカの3球場は、バリアフリーの整備方法はほとんど同じでした。
これがアメリカのスタンダードですね。

いたるところに車イスマークがありますが、これが車イススペース。
一カ所につき8台程度車イスが入れます。もちろん介助者は隣に座れます。




  • 4階のうち3階に車イス観戦スペースあり。球場全体で数百の車イス席あり。
  • グランドを囲んで一周ぐるっと車イススペースがある。予算やその日の気分でいろんな場所を選んで見ることができる。
  • 車イススペースは一カ所につき8台程度。介助者は折りたたみイスを使って隣に座れる。
  • 車イススペースは全席、サイトラインが確保されている → 前の座席の人が立ち上がっても視界がさえぎられないように、前席との高低差が十分にとられている。
  • トイレは、一般のトイレの中に1つ広いトイレがあり、車イスで使えるようになっている。
  • 上の階が視界を遮ってオーロラビジョンが見れない席には、モニター画面が設置。
  • すべて健常者と同じ移動ルートが確保。エレベーターは誰でも使える開放型。




3階の車イススペースから見た風景


車イスの人がいないときは、一般の人にも販売しているようです。

ヤンキースタジアム名物ガーリックポテト。
小なのに山盛りで食い切れず。
激うま!


(2)ナショナルズ・パーク(ワシントンD.C)

 こちら、ナショナルズのホームスタジアムです。

2008年完成。こちらも美しい球場。
どうも人気がない球団のようで、シーズン終わりだし、ガラガラでした。

ここには書いてないですが、チケット窓口には
車イススペースがどこにあるかちゃんと書いていました。
いろんなところにたくさんあるので、値段を選んで決められます。

入り口はいったら、正面が球場。
そのまま1階の通路になって、ぐるっと一周できます。
ここの球場は、介助者の座席が固定式でした。
その間のスペースが、車イス。

 基本的なバリアフリーの整備方法はヤンキースタジアムと同じ。
各階層でぐるっと一周回れるようになっていて、いろんなエリアに車いすスペースがたくさんあります。
ヒューストンのメニッツメイドパークも同じつくりだったので、これがアメリカのスタジアムのスタンダードだと思います。

折りたたみイスのところが、車イススペース。
車イス利用者がいないときは健常者に販売しているようです。

バックネットに車イス席があったのですが、そこにいくスロープ。

この球場も3階まで車イススペースがありました。
球場全体では数百席あると思います。

車イス席からだと、この写真のように上の階が邪魔になって
オーロラビジョンが見えません。
モニターもないので、ここの球場はこれが問題かな。


★おまけ 


この人だれかわかりますか?
ワシントンD.Cにある、フランクリン・ルーズベルトのメモリアルです。
ルーズベルト大統領はポリオで車イスの乗っていたのです。

メモリアルができた時はこの車イスに乗った銅像がなかったそうで、
障害者団体の人たちが設置するように運動して、設置されたそうです。
この銅像、いいな~と思いました。

今朝Facebookをみていたら、
パキスタンのシャフィックも行ってました。
座り方が良かったので、勝手に転載しときます。
パキスタンの障害者運動のリーダー シャフィックだよ





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